2008.11.11
監督:木村威夫
出演:長門裕之、有馬稲子、宮沢りえ
映画美術の重鎮である木村威夫さんが、90歳にして初めてメガホンを取ると聞いて、それを無視できる日本映画ファンはおるまい(I think so.)。
しかし何がそうさせたのだろうか?
戦争を経験した映画屋の使命感と言うのか、自分の表現で戦争を語らずに現場を離れることはできなかった、ということではあるまいか。
社会が病んでいた時代といえる戦時中と、人間が病んでしまう時代といえる現代が、監督自身が最も恨めしく感じていたと思われる「青春時代の喪失感」に焦点を当てて、平行して描かれていきます。
生き残った人々は、がれきの上でも根を張り成長していく樹木のような生命力を持ってはいるものの、傷ついた樹皮に消えることなく残り続ける「こぶ」のように、かけがえのないものを心からえぐり取られた傷跡を背負って生き続けていくしかない、と言うかのような痛みが伝わってきます。
語り口は、タイトルのようにとりとめはないものの、主観の定まった散文のようで、とても映画らしい表現と思います。
映画の美術監督とは、スクリーンに映し出される空間を作る仕事で、ジブリ作品の背景画を描いている男鹿和雄さんのような方、といえば通じるか?
木村さんの場合は、ちょっと誇張が過ぎていたり、シュールだったりするのが特徴で、何といっても鈴木清順監督と組むと、歌舞伎の舞台セットか? と思うほどかぶいたり(奇抜)しちゃうのですが、もうそこに視線が釘付けで、目が点ですから、一度観たら忘れられなくなってしまいす。
1972年に日活を辞めてフリーとなってからは、熊井啓、黒木和雄両監督をはじめ、時代を代表する監督の作品を手がけており、ちょうどわたしが映画を観はじめたころと重なり、木村美術を観て育ったと言っても過言ではない気がします。
お元気でご活躍されますことを!
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