2018/01/15

花筐/HANAGATAMI

2018.1.4

 監督:大林宣彦
 脚本:大林宣彦、桂千穂
 出演:窪塚俊介、満島真之介、長塚圭史、常盤貴子

 戦前に発表された檀一雄『花筐:1937年』を、1938年生まれの大林監督が映画化した作品。
 戦争が迫る時代に、自らの命をまっとうしたいともがいた若者たちの姿は、近い将来ミサイル飛来が差し迫った際の、われわれの姿に重なるかも知れない。
 当時は不治とされた胸の病は、現在では医学の進歩により完治可能となったが、戦争で死にたくない若者を救う手だては、戦後70年を経過した現在でも確立されていない。
 戦争を経験した人々の「不戦の誓い」が揺らぎそうな現在に、あきらめてはいけないと訴える先達たちからのメッセージ
 「君たちも、戦争で死にたくないだろ?」
に、異論を唱える者はいない。

 近ごろは、リアルさにこそ説得力があるとの風潮からか、エグい絵をよく目にするが、ベテラン監督は対極の比喩的表現の中で、あえて「血」をモチーフに用いている。
 何度も登場する「血」のイメージは、命・生命力の表現であり、監督自身の活力=血潮の意味と受け止めた。
 コマ落とし、合成、反転、回転等々の演出に、いまも取り組もうとする意欲に敬服し、三つ子の魂を百まで持ち続けるであろう、少年の心に拍手を送りたい。
 映画が好きで好きで仕方ない、心根が変わらない大林映画の集大成のように映った。