2010/02/08

今度は愛妻家

2010.01.31

 監督:行定勲
 脚本:伊藤ちひろ
 出演:豊川悦司、薬師丸ひろ子

 この監督の作品はいつも「冗長」と感じてしまう面があります。
 巨匠のスタイルを作ろうとしているのか、ダラダラと話しを膨らまそうとするばかりで、しまいには飽きてしまい、演出の印象すら霧散してしまいます。
 またこの監督には、サディストと感じられる面もあり(『世界の中心で、愛をさけぶ』で長澤まさみの頭をそらせたのは成功例だが)、本作の目的は「女神 薬師丸ひろ子像の解体」だったのか? という印象を受けます。
 インタビューで耳にした「薬師丸ファン」を自認する監督が、彼女の顔で「福笑い」をしたかった(?)とも思える表情のとらえ方に、女神のイメージを分解しようとする意志が感じられました。
 確かに、彼女のそれぞれのパーツを分解すると「不思議な組み合わせで出来ていたんだ」と感じさせられる部分に、彼の主題があったのだろうと、納得できる面もあります。
 また彼女には、わざとベタベタとだんなにまとわりついて、男には「うっとうしい」と感じる人物像を求めたのでしょう。
 当時の「薬師丸フリーク」が、父親や中年のオヤジとなった現在において、幻想を捨てるためには必要な儀式だったりするのかも知れません。
 実際は「あんなに太ってないだろう?」という幻想も含めて、「現実と向き合おう」(奥さんや家庭環境等)という提言なんだと受け止めました。
 ──フリークではないわたしには、もうすっかり「一平くんのお母さん」(映画『三丁目の夕日』)としての魅力が定着しているのですが……

 トヨエツのだらしない役まわりははまりすぎで、身のこなしが様になるところなど、監督の自己投影願望が感じられる気がします。

 結局、室内が舞台の会話劇ですから、これで130分(長すぎ)では「疲れたぁ」という印象しか残りません……