2008/06/10

築地魚河岸三代目

2008.6.9

 監督:松原信吾
 出演:大沢たかお、田中麗奈、伊東四朗

 新しい人情喜劇の誕生です!
 江戸っ子という「東京遺産」が闊歩してイヤミにならない場所が、築地という東京の台所にありました。
 また、その切り口が「味」(美味追求)であると思われるところが、今後の広がりを予感させる奥深さを秘めた隠し味となっています。

 大沢たかおクンの明るい表情を久しぶりに観た気がしていますが、もっとハチャメチャにはじけていいんじゃないか、と期待しています。
 魚河岸仲卸の娘が、ネコ科(ゲゲゲの鬼太郎の猫娘役で吹っ切れたのでは?)の田中麗奈というのはちょっと疑問を感じるところですが、一所懸命やってる姿には好感が持てました──彼女の顔を観ながらボロボロ涙を流したとは驚きです……(これは褒め言葉です)
 題材のおかげか、撮影現場にとても活気があるのだと思われ、出演者の表情がみんなイキイキしているように見え、生きのいい作品であるとの好感を持てました。
 それはまさしく監督の力なのだと思いますが、細かいエピソードにもキチッと気を配っていて(オープンのロケと思われる部外者の写り込みまで好感が持てました)、久しぶりの松竹映画らしいいい作品ではないでしょうか(迷作『なんとなく、クリスタル』の監督だとは驚き)。
 とても楽しめました。

 『寅さん』や、『釣りバカ日誌』もいいのですが、若い主人公のシリーズ化が決まったことはとても素晴らしいことですし、主役の二人は次回作からもっとはじけてくれるんではないかと、もう既に期待が膨らんでおります。

2008/06/01

山のあなた 德市の恋

2008.5.29

 監督:石井克人
 出演:草なぎ剛、マイコ、堤真一

 清水宏監督『按摩と女』(1938年)のリメイクだそうですが、本作は間の悪さ、行間情景のスカスカさがどうにも埋められず、演出の力不足を考慮して脚本の変更をすべきだったのではないかと思ってしまいます(脚本・演出もオリジナルを踏襲しようという意図だったように感じられます)。
 ──堤真一が生きていませんもの。
 そんな中でも特筆すべきはマイコの存在で、小津さんの映画を観ているのでは? と錯覚するような、戦前昭和の空気を醸し出してくれる落ち着いた雰囲気を持ち合わせていました。
 鼻はちょっと高すぎるけれど、和服と走る姿が絵になる女性で、この女性は女優をやった方がいいんじゃないか? とも思えました。
 ──原節子さんも、最初は身体の大きさや顔の作りにとまどいを感じられた方も多かったと思われます。

 出来としては「草なぎクンの主演作だから」の感想で伝わってしまう、と言ったら失礼ですが、そう言い切れてしまうのは演出の力不足であり、絵が安っぽく見えたのはプロデューサーの責任に思われます。