2007/01/14

武士の一分

2007.01.14 武士の一分
 スター映画の失敗例の見本となる出来になってしまった。
 皆がキムタクの仕上がりに気を取られるあまり、彼を汚れることのないヒーローに祭り上げてしまっており、観る側も始まった瞬間「彼はヒーローなんだ」と安心してしまい、勧善懲悪の「水戸黄門」を見るような気持ちにさせてしまったのが、根本的な失敗である。
 観る側が望んでいたのは、健康的なイメージのキムタクが映画という世界で、いかに汚れ苦しみもがいて「キムタク、かわいそう!」と思わされる逆境の中からはい上がってくるような姿、なのではあるまいか。
 そこまでおとしめられなかったのは、彼の力不足(映画を支えられない)を悟ったスタッフが、それを補おうとキムタク側に歩み寄ってしまったからであろうことは、演出の甘さを見れば明白である(冷徹さが皆無)。
 それでも成立するスター映画は、作品の出来不出来にかかわらず看板スターが見せ場を作れるから、それを楽しみに人が寄ってくるのである。それすらかなわなかった本作最大の失敗は、木村拓哉が「映画スター」ではなかったということに尽きると思う。

2007/01/04

犬神家の一族

2007.01.04 犬神家の一族
 市川崑さん最後の作品では、オールスターキャストで華やかなものを撮ってもらいたいし、その花道には「金田一耕助の去りゆく姿」こそふさわしい。などとこじつけがましいのですが、無事に新年ロードショー公開を迎えました。
 『切腹』の仲代達也、『木枯らし紋次郎』の中村敦夫、『股旅』の尾藤イサオ等々、往年の市川作品で活躍の面々も駆けつけ、正に大フィナーレにふさわしいにぎわいを呈していました。少々ろれつが回らない御仁も見受けられましたが、本作は作り上げることに意義があると思うので(失礼!)、それこそ声援を送っていました。
 若いころから、崑さんの映画が公開されると喜々として見に行ったものです。テクニックに走りすぎと言われようが、その絵は斬新でカッコイイとしか言いようがありませんでした。ガキの時分、紋次郎を真似ていたのと同じ視線であこがれ続けていたのかも知れません。
 「風の中へ消えていく」紋次郎ではなく、「天から舞い降りてくるかも知れない」金田一耕助の後ろ姿をラストに持ってきたのは、現在の素直な心境なのかも知れません。まぎれもない「ラストシーン」を万感の思いで見送りました。
 崑さん、ありがとうございました。