2014/08/18

2つ目の窓

2014.8.14

 監督・脚本:河瀬直美
 出演:村上虹郎、吉永淳、杉本哲太、松田美由紀、常田富士男

 奄美・琉球に現代も息づく神と人をつなぐユタ(女性)と、アグレッシブな女性を描いてきた河瀬監督の出会いに期待を抱いたのだが……

 主人公の若い二人が自転車で疾走するシーンの爽快感は『キッズ・リターン』『魔女の宅急便』を想起させ、ヒロイン吉永淳の泳ぐ姿と島唄のうまさに目を奪われた。
 ダイビングが趣味である彼女の、着衣での舞うような潜りは「島のマーメイド」であり、吹奏楽部の経験からか堂々とした島唄も見事で、「島のヒロイン」としては絶好の素材であるが、「新たなユタの誕生」ではなく、島の一女性の成長として描こうとする。
 その選択は監督らしく、現在も奄美の生活は自然の一部を間借りして営まれるも、「ここで生きているのは自分たち」という、人間本位的な視点が強く感じられる。
 これまでの文化や生活を否定する意図は無いも「一歩踏み出す姿勢」を訴えるためか、監督は「自然への畏怖(いふ)」についてセリフで説明してしまう。
 分かりやすさといえ、島の高校生に対する言葉としては野暮で、観る側は軽んじられたとシラケてしまう(場内のシラケた空気を久しぶりに味わった)。
 観客の持つイメージを裏切った(シラケさせた)状況から、少女が飛び立つことを描きたかったのではと思うが、本作での女性の積極的行動には「答えを欲しがる焦り」という、都会のキャリアウーマンに通じる印象が強く感じられた。
 それは過酷な環境で生きる女性たちへのエールで、島(日本)で生活する女性への「模索して踏み出すべし」のメッセージとも受け止められるが……

 ニライカナイ(海のかなたにあるとされる異界)に至らない監督の意志の強さは理解するも、海のない奈良県出身の監督は、海に囲まれた奄美の精神風土を消化できているとは感じられなかった。
 今回の事前合宿は楽しいものだったのだろうか?