2008.10.23
監督:三原光尋
出演:中谷美紀、藤竜也、八千草薫
金沢の町の片隅で、ほそぼそと中華料理店を営む年老いた中国出身の料理人。その味に魅せられたシングルマザーが弟子入りして、味を受け継いでいくというヒューマンドラマです。
本作の最大の魅力は、悪意が存在しないこと、と言えるのではないでしょうか。安心して観ることが出来るって大切です。
一般的に師匠と弟子の関係は「疑似親子」と言えると思いますが、ここでも師匠にとっては娘を、弟子にとってはほのかに恋していた父親を、料理を通して求めていたのかも知れません。
こころの通い合った師匠と弟子の共同作業には、男女の共同作業ゆえに生まれる色気や恍惚の瞬間が映し出されている、とすら感じられます。
そこから作り出される料理がおいしくないはずがありません。
料理が作られていく過程というのは実にスリリングで、観る者の創造力をかき立てることができたなら、もうそれだけで成功です。
観る側も、食感や味覚に思いをめぐらせることでしあわせを感じられますし、それを求めて観に来ているのですから。
鉄則通りスープ作りから始まるのですが、それを目にした瞬間から口の中の分泌液が増えるのを自覚してしまいます。
それが実際口にはいるか否かは別問題ですけれど……
どアップが多用されていますが、そのサイズで自分をさらけ出す演技の中谷美紀を撮ると、彼女の骨の形が見えてくるような錯覚さえ覚えます。
──褒め言葉のつもりなら「魂」くらい言えないのかね。
個人的な要望ですが、せっかく金沢が舞台なのですからもう少し地元サービスしても良かったのでは、と思ってしまいます。
ですが『村の写真集』(徳島県)に続き地方都市を舞台にした小品を、企画し撮影した心意気には拍手とエールを送ります。
あまり見かけない藤竜也が前作に続いて出演していますが、監督とはイイ関係のように見えました。
とても分かりやすく、そして誰もが同じように楽しめる映画だと思います。
P.S. 八千草さんが画面に登場するとこちらの表情がゆるむのは、存在感ですよね。それって、わたしだけだろうか?
0 件のコメント:
コメントを投稿