2008.10.10
監督:新藤兼人
出演:柄本明、豊川悦司、大竹しのぶ、六平直政
「これを作らずに死ねるか!」とでも言うかのような強靱な生命力(これは監督個人の執念)と、戦争に苦しめられた体験者としての責任感(もうこれまでも十分に語ってこられたと思うが)によって生み出されたと思われる本作は、まさしく新藤さんの遺言と受け止めていいのだと思われます。
──以前にもそんな感想を持ったことがあったのですが、出来ることならもう一度言わせていただきたいと思っています。
本作については、もちろん時代背景(戦争の時代)が語られるべきと思いますが、「もはや戦後ではない」という時代には登場人物たちが50代前後であったとしても、奪われたときめきを取り戻しながら過去を軽やかに乗り越えていく、やり直しの「青春映画」と言ってもいいのではと、わたしは思います。
96歳になっても「精力ギラギラオヤジ」が健在であるところに、敬意を表します(これ賛辞です)。
脚本・演出共に「マザコン」と揶揄されたことがあったりしても「女好き」をここまで通されれば、誰も文句は言えません。
──奥さんの乙羽信子さんが亡くなってからは、大竹しのぶに惚れ込んでいたのでは?
近作に3本出演している大竹しのぶは、監督の要求と思われる芝居をそれぞれ見事に演じていて、本作のあんばいなんぞは監督も気に入っているのではないだろうか?
自分の分身にトヨエツを持ってきて、美化したいというわがままくらいは許してあげましょうや。
最初に監督の名を知ったのは、映画『祭りの準備』(監督:黒木和雄、脚本:中島丈博)のセリフで「シンドウさんちゅう偉いシナリオライターが、自分の身の回りの出来事を書けば誰でも1本は傑作が書けるいうちょった」というものでした。
新藤さんも原点に戻って、最も大切な体験を書かれたのではないかと思われます。
観て良かったと思っています。
ありがとうございました。
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