2007/04/18

アルゼンチンババア

2007.04.01 アルゼンチンババア

 監督:長尾直樹
 出演:役所広司、鈴木京香、堀北真希

 役所広司、鈴木京香というビッグネームを並べられたと言うことは、企画に力があったということでしょうから、原作ってのがかなり魅力的なんだと思われます。しかし、その期待は開巻と共に崩れ去ってしまいました。
 演出の落ち着きの無さと、脚本が子ども(娘)側に寄り過ぎていると感じるのは、自信の無さから生じているのでは、と受け取れてしまった。
 とにもかくにも、アルゼンチンババアが全然生かされていないのは致命的である。
 妖しさや、近寄りがたいくも魅力的な姿に見えないのだ。鈴木京香の「魔女的(?)メイク」とても似合うのに(彼女の整った顔立ちだから栄える)、実にもったいない……
 彼女が踊るタンゴ(アルゼンチン?)も、堀北真希に教えるダンス教室のレッスンのようで、何の色気も感じさせてくれない。
 「情熱」のかけらすら感じさせない人物たちでは、何のための「アルゼンチン」だったのか、と聞いてみたくなる。
 子ども(娘)側に活路を求めたのが、間違いのもとと思う。もっと大人の話にすべきだったのではないか……(原作もそうだったのか?)
 後で、演出が『鉄塔武蔵野線』の監督と知り、はじめから無理があったのではないか、と思ってしまった。
 この監督であれば「鉄塔」をシンボルとしたように、「ババアの洋館」(すごい表現だなあ)の核になる存在を設定しようとしたはずと思えるのだが、それが「石のマンダラ」だとしたら消化不良に終わってしまった気がする。
 「イルカの石像」の情景はとても好きなのだが、取って付けた子供だましのように見えてしまった……

 『アルゼンチンババア』
 なんてインパクトのあるタイトル!
 観に行くぞと期待していたのに、残念……

2007/03/30

バッテリー

2007.03.24 バッテリー

 監督:滝田洋二郎
 出演:林遣都、山田健太、岸谷五朗、天海祐希

 子どもって、こんなにも大変だったのか。
 過ぎ去ってしまったことを忘れたわけではないのだが、「大人はもっと大変なんだ」という言い訳を振りかざして子どもたちを見て、接していることに気付かされた思いがした。
 キャッチャーの天真爛漫な田舎のガキ大将の造形と主人公の弟の明るさが、ピッチャー(主人公)のうっ屈とした空気を振り払ってくれ、とてもいいバランス感だったいたと思う。
 久しぶりに滝田さんの映画を観たが、野球センスを全面に出したキャスティング、細かなボールの握りへのこだわり、主人公の投球フォームとランニングの姿勢(背筋をピンと伸ばしていて型としてとても美しかった)へのこだわり、そしてCG造形の美しい球筋。陰陽師の経験が生きた技なのだと思う。
 女性の原作者が、ここまでの野球賛歌を書き上げたのは驚きだが、それは単なる野球好きなどではなく、瀬戸内少年野球団にも通じる「チームワークを取り戻すための触媒」(ここでは家族)として、必要な題材であったことが伝わってくるところが素晴らしい。それにしても1,000万部(どういう集計?)とは驚きである。
 天海祐希が足を伸ばして寝転がる場面での「開放感」は、まさに監督の狙い通り、役者は体を「有効に」使って表現するものだと納得させられた。

 P.S. 久しぶりに当事者の方へ、ラブレター的なものを書けてホッとしました。

2007/02/18

どろろ

2007.02.17 どろろ

 監督:塩田明彦
 出演:妻夫木聡、柴咲コウ

不毛な会話。
A「参ったなぁ、これじゃまるで漫画の展開じゃないか!」
B「だったら、何を観に来たんだ?」
A「そりゃ、ブッキーとコウちゃんだよ」
B「で、どうだった?」
A「ブッキーはカッコ良かった」
B「コウちゃんは?」
A「いいコンビだと思うんだけど、彼女、あれだけしかできないと思われたら可哀想だよな」
B「それだけ?」
A「魔物をやっつけた時の、復活の儀式がよかった!」
B「気に入ってるんじゃん!」
A「でも、立ちまわりのCGは無理があるよね。やっぱ『雨あがる』だと思うなあ」
B「ほかは?」
A「ブッキー、コウちゃん、瑛太の競演はどこかで見た気がするけど、若い連中では上の部類という評価なんだろうね」
B「じゃあ、満足したんだろ?」
A「やっぱ、『ブラックジャックの診療所』ってのは、いくら手塚治虫でも書かなかっただろうなあ」
B「……」

P.S. スミマセン、何も書けませんでした……

2007/02/12

それでもボクはやってない

2007.02.12 それでもボクはやってない

 監督:周防正行
 出演:加瀬亮、役所広司

 痴漢という切り口は非常に身近な問題であり、物的証拠が見いだしにくい犯罪であるから、余計な思い入れを排除した裁判のあり方を純粋なテーマに出来ると踏んだと思われるが、見る側はそんなことはもう百も承知である。
 「裁判は真実を導くとは限らない」ことも百も承知だし、そのシステムが問題を抱え続けながらも解決できていないことも周知の事実だと思う。しかし「だから、あなた方も痴漢のぬれぎぬを着せられてしまうかも……」という説得の仕方は「犯人をでっち上げたい警察、検察、司法側の視点」なのではないだろうか?
 現実の対策がおかしいことは百も承知で「女性専用車」「女性の近くには立たない」「万が一の場合は、万歳する」ことしか防衛策のない状況の中で、身の潔白を守っているのである。テーマをぶちあげて世論を高め、議論している猶予はないのである。明日にでも、災難が降りかかりかねない状況での生活を強いられている「それでもボクはやってない」われわれなのである。
 身近な事件から問題意識を感じて欲しいとの狙いなら「痴漢撲滅運動」についてのテーマをぶちあげる方が、格段に説得力があると思えるのだが……(裁判というテーマも難しいが、痴漢撲滅も大儀だと思う)
 テンポも良く、ユーモアも効いているのだが、このテーマの前には徒労でしかなかったという印象。上映時間の長さも「裁判進行のイライラ感」のために必要だったのか? としか思えなかった。

2007/02/03

長い散歩

2007.01.27 長い散歩

 監督:奥田瑛二
 出演:緒方拳、高岡早紀

 主人公(緒方拳)と家族(妻と娘)の状況や、「天使」である娘と母(高岡早紀)とその愛人たちが同様に抱える、年齢や状況を越えた「希薄な人間関係」「孤独感」についてじっくりと描くべきで、客観的視点としての刑事(奥田瑛二)の話しはいらないと思うばかりか、単に答えが見つからない言い訳としての「同情の強要」としか映らなかった。
 制作者側が「こういうこと実際にあるんだよ、参ったよなぁ」などとケツをまくってしまってしまっては、観客はただ白けるしかないのではないだろうか?
 ラストの閉塞感はハマッていると思うが、男とは、父親とは「飛び立たせること」「落ちてきたものをしっかり受け止めること」が出来たなら、それでよしとすべきなのだろうか?
 それすら出来ないことが問題であるというテーマも、それを実現するために体を鍛えようとする思考回路も理解できるのだが、「参っちゃうよな」の声が聞こえてくるような気がして、「ため息つくくらいなら、映画なんて作るなよ」と言いたくなってしまった。

2007/01/14

武士の一分

2007.01.14 武士の一分
 スター映画の失敗例の見本となる出来になってしまった。
 皆がキムタクの仕上がりに気を取られるあまり、彼を汚れることのないヒーローに祭り上げてしまっており、観る側も始まった瞬間「彼はヒーローなんだ」と安心してしまい、勧善懲悪の「水戸黄門」を見るような気持ちにさせてしまったのが、根本的な失敗である。
 観る側が望んでいたのは、健康的なイメージのキムタクが映画という世界で、いかに汚れ苦しみもがいて「キムタク、かわいそう!」と思わされる逆境の中からはい上がってくるような姿、なのではあるまいか。
 そこまでおとしめられなかったのは、彼の力不足(映画を支えられない)を悟ったスタッフが、それを補おうとキムタク側に歩み寄ってしまったからであろうことは、演出の甘さを見れば明白である(冷徹さが皆無)。
 それでも成立するスター映画は、作品の出来不出来にかかわらず看板スターが見せ場を作れるから、それを楽しみに人が寄ってくるのである。それすらかなわなかった本作最大の失敗は、木村拓哉が「映画スター」ではなかったということに尽きると思う。

2007/01/04

犬神家の一族

2007.01.04 犬神家の一族
 市川崑さん最後の作品では、オールスターキャストで華やかなものを撮ってもらいたいし、その花道には「金田一耕助の去りゆく姿」こそふさわしい。などとこじつけがましいのですが、無事に新年ロードショー公開を迎えました。
 『切腹』の仲代達也、『木枯らし紋次郎』の中村敦夫、『股旅』の尾藤イサオ等々、往年の市川作品で活躍の面々も駆けつけ、正に大フィナーレにふさわしいにぎわいを呈していました。少々ろれつが回らない御仁も見受けられましたが、本作は作り上げることに意義があると思うので(失礼!)、それこそ声援を送っていました。
 若いころから、崑さんの映画が公開されると喜々として見に行ったものです。テクニックに走りすぎと言われようが、その絵は斬新でカッコイイとしか言いようがありませんでした。ガキの時分、紋次郎を真似ていたのと同じ視線であこがれ続けていたのかも知れません。
 「風の中へ消えていく」紋次郎ではなく、「天から舞い降りてくるかも知れない」金田一耕助の後ろ姿をラストに持ってきたのは、現在の素直な心境なのかも知れません。まぎれもない「ラストシーン」を万感の思いで見送りました。
 崑さん、ありがとうございました。