2007/02/12

それでもボクはやってない

2007.02.12 それでもボクはやってない

 監督:周防正行
 出演:加瀬亮、役所広司

 痴漢という切り口は非常に身近な問題であり、物的証拠が見いだしにくい犯罪であるから、余計な思い入れを排除した裁判のあり方を純粋なテーマに出来ると踏んだと思われるが、見る側はそんなことはもう百も承知である。
 「裁判は真実を導くとは限らない」ことも百も承知だし、そのシステムが問題を抱え続けながらも解決できていないことも周知の事実だと思う。しかし「だから、あなた方も痴漢のぬれぎぬを着せられてしまうかも……」という説得の仕方は「犯人をでっち上げたい警察、検察、司法側の視点」なのではないだろうか?
 現実の対策がおかしいことは百も承知で「女性専用車」「女性の近くには立たない」「万が一の場合は、万歳する」ことしか防衛策のない状況の中で、身の潔白を守っているのである。テーマをぶちあげて世論を高め、議論している猶予はないのである。明日にでも、災難が降りかかりかねない状況での生活を強いられている「それでもボクはやってない」われわれなのである。
 身近な事件から問題意識を感じて欲しいとの狙いなら「痴漢撲滅運動」についてのテーマをぶちあげる方が、格段に説得力があると思えるのだが……(裁判というテーマも難しいが、痴漢撲滅も大儀だと思う)
 テンポも良く、ユーモアも効いているのだが、このテーマの前には徒労でしかなかったという印象。上映時間の長さも「裁判進行のイライラ感」のために必要だったのか? としか思えなかった。

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