監督・脚本:小栗康平
出演:オダギリジョー、中谷美紀 、アナ・ジラルド、マリー・クレメール
寡作ゆえ小栗康平監督の名は意識から消えていたが、10年ぶりの新作公開を知った際は、久しぶりに「昭和」という時代を体感できることへの、言い知れぬ高揚感があった。
フランス語表記FOUJITA:藤田嗣治(つぐはる)という画家は、パリ・モンマルトル(異国人との融合から刺激を生み出した「芸術の都」)に最も馴染んだ日本人で、内証的とされる日本人的指向を打ち破った作品群は、芸術家のアイデンティティーを獲得した表現だったと言えるかも知れない。
しかしパリで獲得した「狂気」は帰国後、祖国の「戦いから引けない狂気」にすり替えられ、ラスト前で三途の川に沈む『アッツ島玉砕』の制作へと追い込まれる。
戦後、第二の故郷として焦がれるパリに戻るも、「今さら何を?」の扱いによる傷心から描いた教会の壁画には、時代への恨みと、それを乗り越えようとする祈りが込められている。
絶望の淵にありながらも、時代と対峙する手段は絵筆の表現に限られる画家の、光を求める祈りが感じ取れたことは、本作の制作意図が伝わってきたということではないか。
「遅れてきた昭和の名匠」とスクリーンでの再会を期待するも、それも祈る時節となってしまったのだろうか……
フランス語表記FOUJITA:藤田嗣治(つぐはる)という画家は、パリ・モンマルトル(異国人との融合から刺激を生み出した「芸術の都」)に最も馴染んだ日本人で、内証的とされる日本人的指向を打ち破った作品群は、芸術家のアイデンティティーを獲得した表現だったと言えるかも知れない。
しかしパリで獲得した「狂気」は帰国後、祖国の「戦いから引けない狂気」にすり替えられ、ラスト前で三途の川に沈む『アッツ島玉砕』の制作へと追い込まれる。
戦後、第二の故郷として焦がれるパリに戻るも、「今さら何を?」の扱いによる傷心から描いた教会の壁画には、時代への恨みと、それを乗り越えようとする祈りが込められている。
絶望の淵にありながらも、時代と対峙する手段は絵筆の表現に限られる画家の、光を求める祈りが感じ取れたことは、本作の制作意図が伝わってきたということではないか。
「遅れてきた昭和の名匠」とスクリーンでの再会を期待するも、それも祈る時節となってしまったのだろうか……
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