2014.10.14
監督:成島出
出演:吉永小百合、阿部寛、笑福亭鶴瓶、竹内結子
吉永さん初プロデュース作品が発した「さゆりカラー」は見事で、彼女が映画に抱く世界観や心根に接した瞬間、「扉が開かれた」と響いたことが最大の収穫であろう。
タイトルから観客は、寓話の楽しみと多少ベタつく潮っけを覚悟して席に着くが、吉永さんではなく、阿部寛のはみ出した活躍(?)により物語に取り込まれていく。
阿部寛(近ごろは脱ぐのが仕事?)は得な役柄だが、体格の生かし方が上手になった。
笑福亭鶴瓶が演じる、気は優しいが「スケベ心」がにじみ出てしまう「不器用な男」は、高倉健さんとは正反対のキャラクター(女性にはカワイイ存在)として存在感はあるが、彼は果たして演じているのだろうか?(彼の存在で画面がなごむのは確か)
心の振幅を表に出さない吉永さんの持ち味は、亡き夫の影を隠すことで観客から「美しすぎる思い出」の妄想を引き出そうとする演出により、増幅されていく。
本作が、吉永プロデュースの「映画作りますよ〜!」のかけ声に、「その指にとまりたい!」団塊世代のオヤジたちとの、初めの一歩のきっかけになって欲しいと願う。
本作に関わる岡田裕介氏(映画プロデューサー、東映代表取締役会長)は、『赤頭巾ちゃん気をつけて』(1970年)等の俳優時代から吉永さんとは旧知の仲(裕介クンとか呼ばれそう)で、彼女の映画を支えてきたが、本当の意味で一肌脱ぐ時が来たのではないか。
映画企画のキモは「夢の共有感」であり本作のように、吉永さんの「思い」に人々が集うための環境整備に汗をかいて、東映出演作を増やしていくべきであろう。
これまでよりも、映画に一歩踏み込んだ吉永さんの姿勢には、勝手な思い込みだが、今後「さゆりプロデュース」を重ねる中から、「映画人 吉永小百合」らしい傑作映画が生まれる可能性を感じる(個人的には確信している)ので、業界の「サユリスト」たちは彼女が熱いうちに共同作業で「心からの汗」をかき、本望をとげるべきではないだろうか。
わたしも「サユリスト」の一人として、手伝えることがあればと……
追記──もう一人の「映画スター」にもエールを!
東映育ちの高倉健さんは、裕介氏の父 岡田茂氏との険悪な関係から「岡田さんのぼっちゃんの世話には……」となりそうだが、観客から待ち望まれている映画スターを生かせないことは、プロデューサーの力不足に他ならない。
早期の次回作を! と、80歳を過ぎた方に求めるのは酷でも、また「背負ってもらいたい」と、わがままな観客は願っています……
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