2007/01/14

武士の一分

2007.01.14 武士の一分
 スター映画の失敗例の見本となる出来になってしまった。
 皆がキムタクの仕上がりに気を取られるあまり、彼を汚れることのないヒーローに祭り上げてしまっており、観る側も始まった瞬間「彼はヒーローなんだ」と安心してしまい、勧善懲悪の「水戸黄門」を見るような気持ちにさせてしまったのが、根本的な失敗である。
 観る側が望んでいたのは、健康的なイメージのキムタクが映画という世界で、いかに汚れ苦しみもがいて「キムタク、かわいそう!」と思わされる逆境の中からはい上がってくるような姿、なのではあるまいか。
 そこまでおとしめられなかったのは、彼の力不足(映画を支えられない)を悟ったスタッフが、それを補おうとキムタク側に歩み寄ってしまったからであろうことは、演出の甘さを見れば明白である(冷徹さが皆無)。
 それでも成立するスター映画は、作品の出来不出来にかかわらず看板スターが見せ場を作れるから、それを楽しみに人が寄ってくるのである。それすらかなわなかった本作最大の失敗は、木村拓哉が「映画スター」ではなかったということに尽きると思う。

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