2018/07/23

万引き家族

2018.7.7

 監督・脚本:是枝裕和
 出演:リリー・フランキー、安藤サクラ、城 桧吏(かいり)、佐々木みゆ、松岡茉優、樹木希林

 「家族を自分で選べるのか?」との問いかけは、家族崩壊の危機感から生まれるらしいが、選べることができたとしてもそれは疑似家族でしかない。その関係性は、つなぎ止める接点が脆弱なため揺らいだ途端に崩壊してしまうが、本来の家族(血のつながりの有無に関わらず)でも、構成員が守ろうとする意識を持たなければ、あっけなく崩壊するかも知れない。
 本来の家族関係に居場所を失った連中が肩を寄せ合う疑似家族は、食べることで精一杯ながらも、家族生活のように振る舞える環境を共有し、家族の連帯感を手に入れたとの幻想を抱く。
 しかし、複数の名前を演じ分ける娘や、勝手に連れ帰った女の子の名前を聞き間違え、ペットのように勝手に命名するなど、愛情に欠ける無責任な行動からほころんでゆく。

 これまでのリリー・フランキーは役者に片足を入れただけに見えたが、彼自身の生い立ちが見え隠れするような役を演じ、役者としての幅が広がったように。
 安藤サクラは文句のつけようがなく、取調室で涙を拭う長いシーンは心に残るし、今後あれだけのシーンを演じる機会はないのでは。
 城 桧吏は、映画『誰も知らない』(2004年)の柳楽優弥を想起させ、今後が楽しみ。
 海水浴場面の樹木希林の横顔から、笠智衆さんを想起した。TV『寺内貫太郎一家』(西城秀樹の「汚ねーな、ばあちゃん!」)以来、老け役を幾度も目にしたが、本物のばあちゃんになったと(笠さんも老け役を演じ続け老人となった)。

 カンヌ国際映画祭 パルムドール受賞に賛辞を贈ります! が、それは他人の評価。
 私にとっては前作『三度目の殺人』が消化不良だったこともあり、是枝監督の家族を描く作品を渇望していた心にしみ込んだことが、最大のよろこびと。